2006-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「西の善き魔女」 荻原規子

気丈な少女が主人公の、王道を行くファンタジー。5冊シリーズだったが、どの巻もものすごく楽しく読めた。舞台設定、キャラの立ち方、ストーリー展開など、どれを取っても作者の力量を感じさせてくれた。このシリーズを読むきっかけとなった書評の「良質のフ…

「ナイチンゲールの沈黙」 海堂尊

大学病院を舞台にした田口講師&白鳥室長コンビの二作目。物語としてはまぁまぁ。軽妙なタッチの心情描写は相変わらずだし、事件を追いつめていく流れや、小夜の特異な能力が今後に生かされていくというストーリー展開はいいと思う。小夜の内面に深くつっこ…

「腐女子化する世界―東池袋のオタク女子たち」 杉浦由美子

前作(?)「オタク女子研究 腐女子思想大系」は興味深く読ませてもらったが、この本にはかなりがっかり。取り上げられている具体例は前作で読んだようなものばかりだし、特殊なのか、それとも一般的な傾向をうまく表しているのかが全然見えない具体例を根拠と…

「絶対、最強の恋のうた」 中村航

「I Love You」という恋愛短編のアンソロジーにこの人が書いた一作に、前後の肉付けを行って長編に仕立て上げた作品。短編もまぁまぁ良いと思っていたが、女性側からの視点も加わった本作の方が物語に好ましい厚さが出てきてずっといい。また、短編にはなか…

「闇の底」 薬丸岳

「バカをあやつれ!」に続き、連続でダークな本を読んでしまった。「バカを…」と比べると小説としての完成度の低さは目についたものの、扱っているテーマとしてはこちらの方が興味深かった。幼女誘拐殺人事件が起きるたび、その事件と直接関係は無いが過去に…

「バカをあやつれ!」 戸梶圭太

「下流社会を意識的に作れるか」というのが謳い文句だったかと思うが、これは格差社会という言葉に敏感な層への売り文句にすぎなかったようで、実際に読んでみると「阿鼻叫喚な光景に溢れた世界を意識的に作れるか」というものだった。凄惨な描写が多く、何…