2004-01-01から1年間の記事一覧

「約束」 石田衣良

「再生」がテーマの短編集。一つ一つの話は悪くないんだけど、こうも似たような流れの話を立て続けに読むと、飽きが来る。一気に読んでしまってはいけない本なのかもしれない。最後の短編「ハートストーン」は、ありきたりなんだけど、それでも心に響くいい…

「人のセックスを笑うな」 山崎ナオコーラ

「19歳のオレと39歳のユリの切ない恋の物語」だそうだけど、僕の心には全く響くところが無かった。プロットは面白いと思って借りたんだけどな〜。ストーリーはどうということもなく、キャラクターにも全然魅力を感じなかったし。

「「やめる」から始める人生経済学」 森永卓郎

この本も「年収300万時代を…」と主張するところはかなり重なっている。自分にとって本当に幸せとは何なのかをはっきり見極めるべきだということ、そしてそれに向かって着手してみることが重要だと言うこと。着手することについてはなかなか実践できていない…

[おとなの自由研究」 デイリーポータルZ編集部

面白かった。とても面白かった。大学時代に、サークルの友達と無意味なことに真剣に取り組んだあのノリを思い出した。こういうことに手間と時間を割ける林さんたちは、十分に若いです。それにしても、皆さんとにかくテキストが上手。本職のライターは一人?…

「1ポンドの悲しみ」 石田衣良

全体としては、30代の男女のごく日常的な恋愛風景を描いた短編集で、その日常的なやりとりの中で心が動いていく様子が丁寧に描かれていて、好感の持てる一冊だった。その中で、表題作だけが強く異彩を放っていた。大人のドロドロとした性愛にまみれた純愛、…

「ふたりジャネット」 テリー・ビッスン

SFの面白いアイディアと、しっとりとした情感の双方がうまくミックスされた、読んでいて楽しいSF短編集だった。ただ、「万能中国人ウー」シリーズは第1作「穴のなかの穴」がとても素晴らしかっただけに、2作目・3作目は要らなかったような…。

「出禁上等!」 ゲッツ板谷

この本、「しゅっきん上等」なのかと思ったら、「できん上等」らしく。要は「出入り禁止で上等だ」ってことなんですね。「出版禁止上等」なのかと思ってたけど。で、ゲッツ氏の文章にしては、うまく乗り切れなかったような今ひとつ感が残る。連載で訪れたイ…

「夜のピクニック」 恩田 陸

ここ二〜三年では、綿矢りさの「蹴りたい背中」と並ぶ僕的ベスト。パーフェクトな小説だった。「歩行祭」という一見地味なイベントの中で、登場人物やイベントが完全に調和しつつゴールへと収束していく感じ。ほとんどの登場人物がいい人で、ちょっと昔読ん…

「Nothing」 中場利一

著者が「どうだ? いい話だろ? 面白いだろ?」と話を押しつけてくる感じがイヤ。しかも面白くないし。エンジンブレーキのエピソードだけはちょっと笑えたけど。

「グラスホッパー」 伊坂幸太郎

この人の本にしては凡作だと思う。好きになれる作品ではない。 だが、それはそれとして、「だっつーの」が口癖なポップな殺し屋「蝉」のキャラクター造形と、「鯨」の「自殺屋」という職業(?)を思いつく発想は凄いと思った。この二つについては、しばらく忘…

「二次元美少女論―オタクの女神創造史」 吉田正高

美少女「論」というタイトルの割には、ほとんど論じている部分がない。そして僅かに論じている部分がちっとも面白くない。学者としては何とか成り立つのかもしれないが、物書きとしてはいかがなものか。

「幽霊人命救助隊」 高野和明

タイトルと本の紹介記事からは、もっとおちゃらけた内容を想像していた。確かにコメディタッチな部分もあるのだが、著者が自殺というものに対して真摯に調査し考察した結果を本にした、という印象が僕には強く残った。人を自殺から救おうとする動機が「浮か…

「アホでマヌケなプログラミング」 Lepton

タイトルから想像されるようなプログラミング技術の話ではなく、プログラマーの生態や悲哀を中心にしたエッセイ本。著者のホームページの日記を元に作られた本らしい。著者のプログラマー兼講師としてのセンスの真っ当さ、そして物書きとしてのセンスの良さ…

「砂浜」 佐藤雅彦

だんご三兄弟や湖池屋の数々のCM、バザールでござーるなどをプロデュースした人が、どんな本を書くのかと楽しみにしていたが…少年時代への憧憬に満ちた、とても清々しい本だった。子供の気持ち・感性・視点などを上手に忘れないまま大人になれたんだろうか、…

「社長をだせ!実録クレームとの死闘」 川田茂雄

気の重くなるような話が並ぶ本かと思ったら、面白いのなんの。実例をベースに、クレーム処理で無敗の筆者が誠実に立ち向かう様子が具体的に描かれていて、しかも最後には必ず丸く収めてしまうのだから、実に痛快な読み物になっていた。ベストセラーになるわ…

「光ってみえるもの、あれは」 川上弘美

とても気に入った。気に入ったんだけど、どこをどう気に入ったのかを上手く言い表せなくて、ちょっともどかしくもある。基本的には暖かで、ユーモアが滲む文章。でも、突然主人公が難解な言葉を使って自分の心理を語るところでぐっと引き離されたり、味わい…

「東京湾景」 吉田修一

僕がこの人に期待する「心象風景の絵」があまり描かれていなくて、かなりがっかり。第一章の、モノレールの窓からアパートを探すシーンぐらいかな、良かったのは。普通の恋愛小説としても面白さが感じられず、僕的には駄作かも。

「チルドレン」 伊坂幸太郎

相変わらず面白い本を書く。この人の本のキモは「一風変わった癖のあるキーマン」だと思うのだが、その人物の変わり具合がとてもいい。作者はいろんな風変わりなアイディアを思いつく名人なのだろうが、普通の感覚から見てそのアイディアがどれくらい奇異に…

「シャッター・アイランド」 デニス・ルヘイン

仕掛けだけの本はもういい。

「嗤う闇」 乃南アサ

出れば必ず読んでいる音道貴子シリーズの最新刊。4本の短編どれも安定して面白い。ころころと遷ろう主人公の心情に違和感なく共感できてしまうのは、やはり作者の力量なのだろう。でも、この作者の作品は音道貴子シリーズしか読んだことがないわたくし。

「不美人論」 藤野美奈子 & 西研

ブスの心理、あるいはブスを取り巻く環境について、ブスだと自称する藤野さんが卑下することなく、徹底的に核心に迫ろうとする対談。ものすごく面白かった。ブスに関してここまで真摯に取り組んだ文献を見たことがない。画期的な本ではないだろうか?藤野さ…

「オンナノコのおたしなみ」 大田垣 晴子

いつもの大田垣節で読ませてくれるイラストエッセイ。この人にしか出せない味がいい。 最近のこの人の本は、自分の価値観がかなり前面に出てきているように思う。これはこれで良いのだけれど、僕的には、「サンサル」の頃の「対象から一歩引いたところからの…

「臨場」 横山秀夫

面白かった。素晴らしい。横山節を堪能できた。「影踏み」でこの人に感じた不安を払拭してくれる一冊だった。 これまでの横山ヒーローと違い、徹底して他者の視点から一人のヒーローを描いているところが良い感じ。そういう視点からでも、十分に「熱い男」は…

「幻夜」 東野圭吾

待っていた「白夜行」の続編。共犯者自身もまた踊らされる側になっているため、多少味わいに変化はあるものの、基本線は白夜行と同じ。そのため、新鮮味には欠ける。でも、白夜行の衝撃を懐かしく思い出しながらグイグイと楽しく読めた。 悪く言うと「二番煎…

「トンデモ本の世界S」「トンデモ本の世界T」 と学会

この本を読んで感じたことは、やっぱり唐沢俊一の文章は面白いということ。また、植木不等式氏の文章も、今まで気づかなかったけれど実は僕の好みにとても合う、ということ。そして、山本弘の文章に余裕のなさが感じられてちょっと寂しい、ということ。 それ…

「アホでマヌケな米国(アメリカ)ハイテク企業」 メリル・R.チャップマン

面白い本だった。僕がパソコンに触り始めた頃から20年間のアメリカPC業界の事情があれこれ綴られていて、懐かしさを覚えながら楽しむことができた。この本で取り上げられている過ちは、ビジネス必須本の類を全く読まない僕にはとても興味深く映った。ただ、…

「不運な女神」 唯川恵

この人の作品は、直木賞受賞作がとても面白かったのでそれ以降たまに読んでいるんだけど、受賞作以外は「まぁまぁ」といった感じが強い。この本についても概ね同じ感想だけど、この本を読みながら「短編の作家っていうのも凄いなぁ」と妙なところに感心して…

「なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか」 辰巳 渚

ここまで読む気を無くさせる本も珍しい。散りばめられている英単語には何の意味があるのか?日本語でニュアンスが出にくいところを英語を使う、というのなら分かる。この人はちゃんと日本語の文章として完結している文の中に、わざわざ特定の単語の英訳を埋…

「年収300万円時代を生き抜く経済学」 森永 卓郎

小泉首相の政策を陰謀と解釈しているところはちょっとトンデモな臭いがするけれど、そこら辺もちゃんと分かっていて「数字やデータから見るとこういう解釈も可能だよ」と遊んでいるような感じもする。これからはほとんどの人が年収が増えないどころか減って…

「オーデュボンの祈り」 伊坂 幸太郎

「重力ピエロ」や「アヒルと鴨のコインロッカー」ほど洗練されてはいないけれど、この人の力を感じさせる作品。荒削りで多少つっかかりそうになるところはあるものの、力量でどんどん読ませる。そしてたくさんの伏線を生かした美しいエンディング。デビュー…