2005-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「蛇にピアス」 金原ひとみ

文章は清冽で、淀みなく流れていく。しかしそれに載っかっているコンテンツは目を背けたくなるようなグロテスクさ。相反する強烈な二つの印象を同時に残す、不思議な作品だった。痛い話はとにかく嫌いなので、このコンテンツは絶対に好きになれないけれど、…

「進化しすぎた脳」 池谷裕二

大脳生理学についてのエキサイティングな四回の講義。めちゃくちゃ面白い。中高生を相手にこれだけの分かりやすい講義をライブでやってのける力量は本当に大したものだ。「この講義を高校の頃に受けていたら人生が変わっていたかもしれない」と著者自身が自…

「すごい会議」 大橋禅太郎

普段はビジネス書なぞ毛嫌いして寄りつかないんだけど、書評に惹かれて読んでみたら、これはなかなか良いビジネス書だった。短くて内容はシンプルなんだけど、具体的で説得力がある。これまで聞いたことのないメソッドが並んでいるのだが、「これは使えるん…

「上陸」 五條瑛

日雇い労働者三人組が、謎を解いたり犯罪に手を染めたり、と活躍(?)する連作短編集。話自体の質はそう高くないとは思うが、とにかく日雇い労働者の視点から見た世の中の語り口が斬新で面白く、いいペースで最後まで読めた。時間軸的には一番最初に来るはずの…

「魔法使いになる14の方法」 ディアナ・ウィン・ジョーンズ/他

魔法と学校にまつわる14の短編集。かなりハリー・ポッターを意識しつつ集めたようだが、ハリー・ポッターに比肩できるような話は二本程度しかなく、非常にがっかり。改めてハリー・ポッターの偉大さを認識した次第。

「世にも美しい数学入門」 藤原正彦・小川洋子

「天才の栄光と挫折」と「博士の愛した数式」のどちらもまだ記憶に新しいので、その二つのエッセンスを元にした対談集であるこの本は、特に新しいものはなかった。数学と日本人と文学をそれぞれ賛美するのはいいんだけれど、それだけに終始している感があっ…

「号泣する準備はできていた」 江國香織

何かしら美味しそうな香りはするのだが、味わい方を知らないので十分に楽しめなかった、という感じの短編集。それでも、どちらかというとハッピーな作品(「熱帯夜」や「こまつま」)、思いが溢れるような作品(表題作や「そこなう」)は楽しむことができた。ど…