2007-03-01から1ヶ月間の記事一覧

「使命と魂のリミット」 東野圭吾

序盤から中盤にかけて、これでもかと言わんばかりに夕紀が西園を疑う材料が出てきたので、これは最後は「いい話」になるな、という展開は読めていた。しかしそれが分かっていても十分楽しんで読み進められたし、ラストでそれなりに感動させてくれるところが…

「ぼくの手はきみのために」 市川拓司

いかにも市川拓司的な、穏やかで「草食動物のような」人たちが織りなす恋愛短編三編。冒頭の表題作はどうということはなかったが、二編目の「透明な軌道」では、タイトルの通り透き通った美しい世界が描かれていたし、三編目の「黄昏の谷」は、長屋の人たち…

「数学的にありえない」 アダム・ファウアー

「もし将来に起こりうる全ての事象を見渡す能力があるとしたら…」という仮定のもとに走り出すジェットコースターのような小説。確率・統計や量子力学に関するものの考え方を噛み砕いて説明しつつも、ストーリー自体はエンターテイメントとして力強く、読むも…

「100万分の1の恋人」 榊邦彦

少し読んで「難病ものかよ勘弁してよ」と思ったが、さらに読み進めてみると、ちょっと普通の難病ものとは違っていた。発病すれば必ず死に至る病なのはよく恋愛小説に出てくる難病と同じだが、長くて辛い介護を要する、というのが他の難病と一線を画している…

「あかんべえ」 宮部みゆき

三途の川の河原で不思議な水を舐めてしまったことから、「お化けさんたち」が見えるようになってしまった少女を中心に展開する、江戸人情噺。料理屋が舞台だし、もっと淡々と話がすすものかと思っていたけど、読み始めてみると休む間のないジェットコースタ…

「10ドルだって大金だ」 ジャック・リッチー

楽しく読める、肩の凝らないミステリー短編集。「クライム・マシン」の作者の短編集ということで楽しみにしていたが、この短編集も良かった。解説にも書いてあったが、さくっと読めて後に何も残らないのがいい。口当たりが良い、とでも言えばいいのだろうか…