「不美人論」 藤野美奈子 & 西研

ブスの心理、あるいはブスを取り巻く環境について、ブスだと自称する藤野さんが卑下することなく、徹底的に核心に迫ろうとする対談。ものすごく面白かった。ブスに関してここまで真摯に取り組んだ文献を見たことがない。画期的な本ではないだろうか?

藤野さんの「これって本当に対談で出てきた言葉なの?」と驚嘆させられる、的確な言葉を使った自己分析&心理描写。それに対して、これまた実に平易な言葉を使って社会科学的な観点からの分析やツッコミを行う西さん。非凡なプレーヤー同士の美しいコンビネーション。感心しました。

最初は「美人かどうかなんて、ある一つの価値でしかないのに、なぜこの人達はこんなにこだわるの?」と不思議に思った。でも読み進むうちに、今の社会の実際問題として「美人かブスか」という観点が特に際だって重い価値として扱われていることが徐々に認識できるようになってきたし、僕自身の中でも、女性に接する時に、その人が美人かどうかによって初期の価値判断が大きく引きずられていることにも気づくようになった。これは興味深い発見だった。

あと、西さんの「人間には愛情関係と役割関係の両方が必要」という考え方が、とても整理されたスマートな知見だと感じた。

西さんの本はぜひ読んでみたい。藤野さんの漫画も、機会があれば。(^^;)