粗忽者の顛末

5/28(土)は、六本木で開催されたワールドカフェ・イベントに参加しました。
閉会後、ちょっとだけ会場の片付けを手伝って、二次会に潜り込みました。
で、二次会も次のお客さんに場所を引き渡すために強制終了となり、
会費を払おうとして気付きました。


財布と鍵ケースが入ったセカンドバッグを紛失してしまったことに…。orz


会場に向かう日比谷線の中でセカンドバッグを取り出したことは覚えています。
ですので、日比谷線六本木駅に直行しました。
駅の忘れ物案内所に駆け込んで紛失したことを伝えると、
担当の駅員さんがすぐに調べてくれたのですが、
忘れ物データベースには登録されていませんでした。
地下鉄終点の中目黒駅にも電話で問い合わせてくれたんですけど、
残念ながらセカンドバッグの落とし物は届いていませんでした。


幸いSuicaはベルトから下げたポーチに入れてあったので、家には帰れます。
日比谷線東横線と乗り継ぎつつ、念のため
「ワールドカフェ会場に落とし物が無かったか問い合わせをお願いします」
とイベントの連絡掲示板に書き込んだりもしました。


自宅の最寄り駅に着いたら、交番に駆け込んで、遺失物届けを申請しました。
そこで分かったことは、
神奈川県警で遺失物届けを出しても、落とし物が都内で見つかった場合には神奈川県警に連絡が来ない」ということでした。
仕方ありません。翌朝都内の交番まで出かけて、警視庁に遺失物届けの申請を行うことを決意しました。


帰宅後、家族に玄関の鍵を開けてもらい、シャワーを浴びてまずは一息。
そして、クレジットカード4枚とキャッシュカード1枚の停止申請のため、電話をかけまくりました。
とりあえず、最後に電車の中でバッグを見た15時以降の使用歴は全く無し。
やれることはやった、ということで、その日は2時前に就寝。
眠れはしたんですけど、とても浅い睡眠でした。(-_-)

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三遊亭白鳥さんの創作落語会@横浜にぎわい座

昨夜は、創作落語で鳴らす若手真打、三遊亭白鳥さんの創作落語会に行ってきました。動物任侠もの「流れの豚次(ぶたじ)」4部作です。


episode.1 「掛け取り 上野動物園

任侠の世界に生きる豚の豚次が、貧乏なアライグマ親子をかばって、上野動物園を支配する性悪の白黒親分(笹を食べるアレです)に立ち向かっていく、という物語です。
「掛け取り」という古典落語をベースにしているらしいのですが、僕は残念ながらそのオリジナルを知らず…orz。オリジナルを知らなくても大笑いできる噺だったのですが、オリジナルと対比させるとより面白さが増しただろうと思うと、個人的な残念感は拭えません。もっともっと落語を聞こう!


episode.2 「任侠 流山動物園」

千葉県流山市の動物園を舞台に、チャボ、牛、豚(豚次←上野動物園を追い出されて今ココ)の三頭が、何とか動物園に人を呼ぼうと奮闘する物語です。上野動物園の白黒親分は今回も登場。もうこのエピソードからは、古典落語とは関係が無い、完全な創作でしょう。いや、もしかしたら何かの任侠映画のパロディなのかもしれませんが…そこはもう僕には全く分からない世界です。


episode.4 「天王寺 代官切り」

落語会が後半に入ると、episode.3よりも先に、今回が初お披露目というepisode.4が語られました。

訳あって、東海道を下り、金比羅様を目指して旅する豚次。大阪の街までやってきたのですが、そこは警察組織にうまく取り入って権力を手に入れた犬たちが、我が物顔に支配する街だったのです。その犬たちを率いる悪代官こそが、「カール」という名のシェパード。そう、「刑事犬カール」ならぬ「警察犬カール」だったのです。木之内みどりの笑顔が頭をよぎります。白鳥さんの歳が知れようというものです。

「公園で寝泊まりすると、犬たちに襲われるよ」そう教えてもらった豚次が身を寄せたのは、天王寺動物園でした。そこを仕切るのは、若い頃はやんちゃな暴れ者だったけど、今では仏の親分と慕われている、丹頂鶴の… いや、これ以降は伏せておきましょう。(^^)


episode.3 「雨のベルサイユ」

最後の噺は、タイトルからして独立した噺なのかと思ったら、豚次シリーズの3番目のエピソードでした。トリに持ってくるだけあって、力が入ってました。

金比羅様を目指す豚次は東海道を下り、美濃へとやってきます。このエピソードで、なぜ豚次が金比羅様を目指すのか、その理由が明かされます。

街道で美濃のチンピラ猿に絡まれた豚次ですが、すぐに兎の親分が割って入り、豚次は詫びの酒宴へと招待されます。その席で豚次は、なぜ「ベルサイユ」などという名前の動物園がいきなり美濃の山の中にできたのか、という話を兎の親分から教えてもらいます。フランスかぶれしてしまった成金が勢いで作ってしまった動物園。それが「ベルサイユ」で、そこに君臨するのが女王の「マリー」、かつてマリー・アントワネットが飼っていた猫の血を引くという雌猫だったのです。

その女王にはやたら腕の立つレッサーパンダの用心棒が付いているために刃向かうことができず、他の動物たちは女王の圧政に苦しめられていました。満足に餌も食べられない動物たちは、ついに兎の親分を先頭に立てて革命を起こそうとします。しかしその矢先、兎の親分の一人娘「ミッフィー」が女王一派に攫われてしまったのでした…。

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前座さんを入れず、最初から最後まで白鳥さんが出ずっぱり。大変だったでしょうが、今回は女流浪曲師「瑞姫」(たまき)さんとのコラボレーションで、語りの合間にストーリーに沿った浪曲が入るという面白い構成でした。途中で白鳥さん自身も浪曲を一節うなってくれましたが、浪曲の腕は全然素人。しかしだからこそ、瑞姫さんの実力が一層引き立つ、という良い演出になっていました。

この「流れの豚次」シリーズは、全10話という構成ができているそうですので、できればepisode.5以降も瑞姫さんとのコラボで見せて頂きたいものです。

iPadのSNS系キラーアプリ「Flipboard」

iPadユーザーの皆さん!もう「Flipboard」は試してみましたか?

去年の夏に出たこのアプリ。僕は昨日友達に教えてもらって、初めて使ってみたんですけど、いやーとんでもないです!

一言で言うと、Twitterの「タイムライン」やFacebookの「ホーム」を雑誌形式で見せてくれる、っていうアプリなんですけどね。
単によくあるTwitter/Facebookアプリの表示画面のレイアウトを雑誌風に変えただけなんじゃない?って思いますよね?僕もデモ動画を見てそう思いました。ところが、実際に使ってみると、その凄さに度肝を抜かれました!


Facebookサイトに対してどこが優れているか?

Facebookのサイトだって、インタフェースは良くできています。リンク先の写真や動画のスナップショットを表示してくれますよね。

でも、そうしたイメージが表示されるのは、Facebook上で作成した「近況」に埋め込まれたリンク先だけです。何が言いたいかというと、「Twitter連携機能を使ってTwitterから投稿された近況の場合、その中に埋め込まれているリンク先は、イメージが表示されずにURLがテキスト表示されるだけ」なんです。

ここがFacebookサイトの残念なところ。Twitterから投稿された近況に埋め込まれたリンクは、例えそのコンテンツがインパクトがあるものだとしても、FacebookのホームではURLテキストが地味に表示されるだけ。実に残念です(^^;)。

その点、Flipboardは、ちゃんとリンク先のイメージを表示してくれます。インパクトのあるイメージは、それがTwitterから投稿されたツイート内のリンク先にあったとしても、見落とすことなく、リンクをクリックする必要も無く、目に入ってきてくれるのです。
TwitterからFacebookに投稿する人も増えている状況で、これは嬉しい機能です。


Twitterアプリに対してどこが優れているか?

PCでもiPadでも、多くのアプリがリンク先の「画像共有サイト上の画像」を表示してくれます。
でも、そのリンク先が、アプリが対応していないサイトだったらどうでしょう?例えばブログだったら?あるいは、商品や組織、イベント等の紹介ページだったら?

Flipboardでは、リンク先がテキストと画像で構成されるページであっても、そのページのテキストを抽出して、(スペースがあれば)画像と一緒に「記事」として見せてくれます。いやむしろ、ツイートの紹介文よりも、リンク先のページの内容を優先して見せてくれます。

気になった「記事」をタップすると、ツイートと、Flipboardが作った「記事」の全文が表示されます。そしてその画面の下の方には…リンク先のページが、Webブラウザで表示されるイメージそのままの状態で待機しています(リンク先ページの上部だけが少し顔を覗かせている状態です)。

そのまま画面を勢いよく上方にフリックすると…少しだけ顔を覗かせていたリンク先ページが、内蔵ブラウザで全画面表示されます!
Flipboardが作る「記事」を読んでいる間にリンク先ページの先読みが行われるようで、リンク先ページの全画面表示に要する時間はその分短く済みます。そのため、「記事」から「リンク先ページ表示」までの遷移が滑らかに感じられます。

要は、一つのツイートに対して、Flipboardは次の三つの情報を見せてくれます。
(1)ツイートしたテキスト
(2)ツイート内URLのリンク先から生成した「記事」
(3)リンク先のページ

大抵のTwitterアプリは、ツイート内のリンクをクリックすると、(2)を跳ばして即(3)に遷移します。そのため、リンク先ページを読み込むのをしばらく待つことになっちゃいます。。

しかしFlipboardでは、予め(2)の「記事」を作成してくれます。そのため、アプリの起動時には少し待つ必要があるのですが…しかし「記事」があるおかげで、リンク先ページの内容に当たりを付けることができます。これによって、リンク先のページをブラウザで参照するかどうかを判断することが可能になります。
つまり、「記事」を見て、このリンク先は別に読まなくてもいいなぁと判断すれば、リンク先のページ全体が読み込まれる時間を待たなくても済むのです。使ってみればすぐ分かっていただけると思いますが、これは画期的な機能です!


というわけで、長くなりましたが、iPadの画面の広さを存分に活かしたこのアプリ、まだご存じなかったなら、一度試してみませんか?
そう、試せるんです。このアプリはFREE、無料なんです!気に入らなかったらiPadから消せばいいだけの話。一度試しに使ってみることをオススメいたします!

話題のAERAの表紙


(写真データは http://twitpic.com/4bazrb から転載させていただきました)

AERAの表紙には僕も考えさせられましたが、AERAには別に恐怖心を煽ろうという意図は無くて、単純に二つ言いたいことがあったんじゃないか、というのが僕の想像です。

  1. 放射性物質が首都圏にも飛来する可能性があるんだよ
  2. 現地では、防毒マスクを被って事態に対処しなければならない、という現実があるんだよ

どちらも事実だと思うんです。
ただ、この二つをそれぞれキャッチコピーと写真で表現して、一緒くたに纏めて表紙にしたら、表紙を見た人がどのようなメッセージを受け取るのか、という想像力が欠けていたんじゃないでしょうか。

悪気は無かったんだけど、表現のプロとしては痛すぎるミスを犯してしまったんだ、と僕は考えています。

「君に届け 2nd season」はやっぱり凄かった

君に届け 2nd」もepisode.9まで話が進み、上昇気流に乗ったまま今期をフィニッシュしそうですが、やっぱりこのアニメは凄いよな!と感心することしきりな訳です。僕が「凄いよな!」と思うところを4点ほどまとめてみます。

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(1) オープニング(OP)→本編→エンディング(ED)の流れが完璧!

この凄さはアニメ作品ならではの凄さですね。


まずOPですが、楽曲は第一期で好評だったタニザワトモフミを起用して、風早視点のいい楽曲を作ってきました。「楽曲と絵の組合せで、これ以上この物語に合うOPは考えられない」と僕が考えている第一期OPには若干及ばないにしても、他のアニメと比べれば十二分に高いクオリティです。特に爽子がゆっくりとスピンしながら画面上から下へと捌けていくカットは秀逸!


次にEDですが、第一期EDの楽曲はCharaの「片想い」でした。大物アーティストによる楽曲でしたが、なんか曲が一人歩きしているようで、「作品世界に合ってないよね」というのが僕の印象でした。実際、爽子と風早は全然片思いじゃないし(笑)
その点、第二期のEDは知らないアーティストの楽曲でしたが、作品世界との相性は完璧。タイトルからして「君に届け」ですから。歌詞に込められた「伝えたい」「君に届け」というメッセージは、まさにこの作品世界のためにあるような曲だ、と思わせてくれます。


そして「こりゃ凄い!」と思うのが、OP→本編→EDの流れです。作品世界にピッタリと合った素晴らしいOPとEDに、丁寧に作られた本編がサンドされて、完璧な流れが構成されています。特に本編からEDへの導入は、EDのイントロのピアノが本編最後のBGMとして使われ、本編からEDへとシームレスに流れていきます。この手法は最近だと「のだめカンタービレ」とかでも使われていましたが、「君に届け2nd」での使い方は実に効果的だと思うのです。


(2) 二人の気持ちを通わせるためだけに1クール使い切るところが凄い!

これは、原作とアニメ版シリーズ構成の両方が凄いんだと思います。(未だ原作は未読なのです)


この第二期を見始めたときは、何がこの第二期のゴールに設定されているのかが分かりませんでした。でも、爽子と風早のすれ違いが大きくなっていくにつれ、「相手に自分の気持ちを伝える」ということだけのために1クールを使う気だ!ということが分かって、愕然としてしまいました。
この二人、自分の気持ちにはそれぞれ気付いていて、「二人だけの年越し」というイベントまでクリアしているのに、その二人に「伝えさせる」ためだけに1クール分の時間を費やすのか!とびっくりした訳です。


でも、考えてみるとそれは十分アリで、描き甲斐のあるテーマだと思いました。人に自分の考えや気持ちを正確に伝えるために、どれだけのエネルギーや勇気が必要かについて、僕らは既に多くの経験をしています。だから、「何てもどかしいんだ!」「さっさと付き合えばいいじゃん!」とか思いつつも、主人公二人の気持ちは理解できるし、強い思い入れを持つこともできるんです。
のだめカンタービレ」第二期のように、話の展開を急ぎすぎることで作品のクオリティを格段に落としてしまった例もあります。これはじっくり見せてもらおう!と腰を据えることができました。


(3)胡桃というキャラの使い方が凄い!

これは原作の凄さですね。


第一期の胡桃は、爽子のライバルとして登場し、爽子と風早の関係を急速に進展させるブースターキャラとして大活躍しました。でも、第一期の最後には風早に振られて吹っ切れていたので、第二期では爽子にポジティブな支援をする存在になるだろうとは予想していました。そして、第二期で爽子と風早のすれ違いが極大化したとき、爽子にターニングポイントとなる「気付き」を与えるのは胡桃先生しかいない、と僕は彼女の活躍を切望したのです。胡桃はそれを裏切らない活躍を見せてくれました。第二期の胡桃の役割はそれで終わり、でフェードアウトしても良かったんです。


しかし、episode.8で、意を決して風早に気持ちを伝えに行く爽子とすれ違う形で胡桃が下校していくシーンが描かれます。そのシーンに胡桃を出してくることにショックを受けました。「十分な働きをしてくれた胡桃に対してそこまでするか!」「今後胡桃の再生を描いていくには、今ここまで厳しく描かなきゃならんのか!」と、原作者に対する畏怖の念を抱きました。女性に対してこれほど厳しいシーンを描けるのは、やはり原作者が女性だからでしょうか…。いや、作家というものは凄いものです。


(4)アニメ制作スタッフの気持ちの入りようが凄い!

最後は、アニメ版の凄さになります。


第一期から、アニメ版のとても丁寧な作りには感銘を受けていました。どの台詞をどれくらいの間で、どのような絵で見せたいのか。そうした「設計」の筋の良さ、「作法」の美しさが、ビンビン伝わってくるのです。原作から読み取った作品世界を、きちんとした形で視聴者に届けたい!という気持ちが伝わってくるように僕は感じました。


その丁寧な作りは、第二期になっても変わりません。第一期と同じように好印象を抱いていたところに、圧巻のepisode.9がやってきました。爽子と風早の表情の作画も、動かし方や見せ方の演出も、あまりに凄いレベル!
「シリーズ最大の見せ場はここなんだーーーーーー!!!」っていう制作スタッフの叫びを聞いたような気すらしました(笑)。


今後のepisodeでの盛り上がり極大点は、お互いに伝えたいことを伝えることができた!っていうシーンになるでしょうけど、それをepisode.9と同じレベルで見せつけられたりしたら、僕はもう泣いてしまうかもしれません(笑)


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と長くなりましたが、何はともあれ、残りの数話を全力で楽しみたいと思います!

一人モテ構造

うちの夫婦は趣味がオタクがかっていまして、週末の夜に子供を寝かしつけた後は缶チューハイを半分こしつつ、一緒にアニメを見たりします。最近のアニメは、ライトノベルを原作として作られているものも多いのですが、アニメ化された人気の高いライトノベル、特に男性作家によって書かれたものに、とある傾向があることに目が向くようになりました。とにかく、物語の語り部である男性主人公が一人でモテまくるのです。

ここ数年の話題作(ライトノベル原作→アニメ化)で、我が家で見たものとしては、次のような作品があります。

  1. 涼宮ハルヒの憂鬱」累計600万部
  2. 狼と香辛料」累計350万部
  3. 俺の妹がこんなに可愛いわけがない」 累計280万部
  4. 化物語」 累計119万部

(原作の累計発行部数についてはこちらのサイトを参考にしました)
合計1,300万冊以上売れているテキストの中で、「男性主人公が一人で多数の女性から好意を寄せられる」という「一人モテ構造」が成り立っているのです。ここでリストアップしたライトノベル等のオタク作品には縁のない方でも、「島耕作のように主人公がモテる」と言うと、雰囲気が分かっていただけるでしょうか?男性作家が描くオタクのパラダイスというのは、かくも強欲な世界なのですね。

ですが、もう少し注意深くこれらの「一人モテ構造」小説を見てみると、この構造のもう一つの特徴が浮かび上がってきます。それは、「メインヒロインは一人だけ」という特徴です。つまり、華やかな女性陣に取り囲まれているように見えても、主人公と強い恋愛関係を築き上げる女性はメインヒロイン一人だけ。他の女性はサブヒロインとしての立ち位置をわきまえていて、「主人公を取り合うメインヒロイン対サブヒロイン」といった敵対構造は通常発生しない、という特殊に平和な世界に主人公たちは生きているのです。。

どうやら、男性作家が描くオタクのパラダイスというのは、「メインヒロインと一途な恋愛を貫きつつ、サブヒロインたちからも軽く多モテしたい」というご都合主義的かつ強欲な世界のようです。複数のヒロインの間で本気の取り合いが起こったり、強い嫉妬が生じたりするのは面倒。でも魅力的なサブヒロインたちとは友好的な関係をキープしておきたい。そのため、主人公はしばしばメインヒロインから「あなたは誰にでも優しい」と釘を刺されます。「何それムカつく」と思われるかもしれませんが、このような人間関係をベースに書かれている小説がとても売れている、というのも事実なのです。こうした本を買い求める男(ex.私)が現実とフィクションを区別できていることを祈ることにいたしましょう。

ところで、女性作家の書くライトノベルは読んだことがないので、私の読んだことのあるマンガの話に限られてしまうのですが…女性作家の描く「女性主人公の一人モテ構造」というのは、見たことがありません。女性作家のマンガの中では、「色とりどりのサブヒーロー達からの多モテ」が描かれないのです。例えば、次に挙げるマンガはどれも女性作家の作品ですが、全て「1対1の強い恋愛関係が数組共存する」という特徴があります。

(累計発行部数はWikipediaでの調査結果を参考にしました)
私の読んだ限りでは、女性マンガ作家の描くパラダイスは、「主人公の女性&親しい友人たちが皆良き伴侶を得て、主要登場人物全員がハッピー」という、ある意味ご都合主義的な、しかし皆がWin-Win関係にある世界のようです。

このように、男性作家と女性作家の描くパラダイスが「非対称」である点は、オタク的な視点から男性と女性の恋愛に対する欲求の違いを浮かび上がらせているようで、興味深いなぁと思うところです。

「放浪息子」を好きな理由:理系暴論編

ノイタミナ枠の「放浪息子」を第3話まで見ました。相変わらずいいですね。全編の画面を通して統一感のある淡い色合いがたまりません。オープニングのテロップに出てくる「色彩設計」の担当者が本当にいい仕事をしているんだなぁ、と感心してしまいます。

さて、自分がどうして「放浪息子」を気に入っているのかについて、ちょっと乱暴だけど、妙にしっくりくる理由を思いついてしまいましたので、書き留めておこうと思います。

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まず、このアニメを見ていつも思うのは、同じノイタミナ枠の「フラクタル」のように、奇をてらった世界を舞台として何かを描こうとしている訳ではない、ということです。主人公たちを取り巻く同級生は、実に平均的な「中学生になりたて」の12歳たちですよね。そして主人公たちを取り巻く大人も、これといって特徴のない親や先生たちです。舞台自体は、本当にごくありふれた日常なんです。ただ、主人公の所属するグループの中の数人の嗜好が、一般からはややずれています。この「ずれ」から僕が連想したのが、y=sinθ, y=cosθの二本の波と、「感情曲線」というキーワードです。乱暴な発想ですが、もうちょっと説明してみます。

自分の性別と嗜好のギャップに「悩まない」人(=視聴者の大部分)の感情曲線をy=sinθの波としてみると、自分の性別と嗜好のギャップに「悩む」人(=主人公たち)の感情曲線は、y=cosθの波に相当するんじゃないか?というのがこの「好きな理由:理系暴論編」の骨子です。y=sinθとy=cosθは、こうやってテキストとして書き下すと見た目は違う関数になっちゃいますけど、グラフの波は同じ形を描きますよね。
波のアナロジーで主人公たちと自分との関係を考えてみますと…

  • 主人公たちの感情の揺れ幅(=波の振幅)は、視聴者が「かつての自分」として思い描く一中学生と大差ありません。
  • また、主人公たちの物事へ対処する思考スピード(=波の周波数)も、視聴者の思い描くかつての自分と大差ないように思います。
  • ただ、主人公たちが当たり前のように認めている嗜好(=波の位相)に(π/2程度の)「ずれ」を感じるだけなのです。

つまり、僕が「放浪息子」を見て感じる美しさは、中学生だった頃の自分(y=sinθ)と「放浪息子」の主人公たち(y=cosθ)を同時に視野に入れることで見えてくる美しさなんじゃないか、と考えたわけです。僕は、位相がπ/2だけずれた同じ形の二つの波が織りなすハーモニーを楽しんでいるような気がしているのです。

あるいは、こう言い換えられるのかもしれません。僕は「女の子になりたい」と思ったことはないから、異性になりたいと憧れる主人公たちと感情を重ねることはできません。でも、π/2の位相差をキープしながら、主人公たちの感情の起伏をトレースできると感じているし、また今後もトレースしていきたいと思っているのです。

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などとあれこれ考えつつ、来週以降も実に楽しみな作品です!