「ひきこもり文化論」 斎藤 環

消化しきれないほどの示唆に富む、実に興味深い一冊だった。

特に、
・ひきこもりについては、原因となったイベント自体に大した意味はなく、むしろ長期化に至るメカニズムの方が重要だという指摘
・他者との距離感の喪失(←僕の解釈)に起因する、家庭内暴力とインターネット上での攻撃性との間の類似性
の二点が強く印象に残っている。

そもそも「ひきこもりというのは主に外との関係を持たない『成人』を差し、重なる部分はあるものの『不登校』とは違う概念である」ということすらよく分かっていなかった。この「よく分かっていない」存在が、現在では100万人に達しているのではないかと言う。今後は2ちゃんねるでひきこもりの当人達の書くものも少し読んでみたい。

この筆者との価値観が僕としっくり合う事も、この本を楽しめた要因の一つだろう。インターネット文化、おたく文化の把握も実に的確で、「ロフトワンプラス」で話をしているというのも頷ける。もっとこの人の書いたものを読んでみたい。