「富の未来 上巻」 アルビン・トフラー

この類のビジネス啓蒙書(?)は基本的に読まないのだが、この有名な人が、今の世の中や「富」そのものをどう捉えているのかと言うことに興味を持ち、読んでみた。一部退屈な箇所もあったものの、概して期待通りに興味深く読むことができた。

ファンダメンタルズの深部に「時間」「空間」があり、それが今の経済学では把握できていないという指摘は、何となく当たっているようには感じるものの、まだまだ漠然としすぎていて、それをどういう風に系統立てて捉えていけばいいかという疑問には応えていない。ただ、それは多くの経済学者が取り組むべき仕事であって、こういう人は本質的な問題点の指摘をすること自体が仕事なのかもしれない。

それよりも興味深かったのは、「世の中が金銭経済だけでなく、お金のやりとりが発生しない非金銭経済からも構成されていて、その影響力は次第に無視できないほど大きくなっているにもかかわらず、現在の経済学ではそれを扱おうとしていない」という指摘だった。著者が具体的に挙げている非金銭経済の例と、それが金銭経済に影響を与えている例は具体性と説得力があり、こういう考え方を聞いたことがなかった僕にとっては非常に面白い議論だった。

こうしたことを前提にして、これからの「富」という概念はどうなっていくのか、富を蓄積すると言うことはどういうことなのか、ということが下巻で展開されるのだろう、と期待している。