「ビッグバン宇宙論」 サイモン・シン

ビッグバン宇宙論のライバルだったという定常宇宙論との関係をしっかり描くことで、ビッグバン理論がどのような経緯を辿りながらメジャーな理論になっていったのかを知ることができた。そのおかげで、ビッグバン理論の特徴をより明確に把握できるようになったと思う。

書評によると、この人の著作の常らしいのだが、科学者たちの人間らしさを表すエピソードにまでしっかりと踏み込んでいる点もいい。猛烈な復讐心に駆られて素晴らしい発見を成し遂げた人のエピソードと、定常宇宙論を提唱したアクの強い人物が「重い元素の成り立ち」を解明することによって、定常宇宙論だけでなくビッグバン宇宙論をも補強してしまったというエピソードが特に面白かった。

ただ、あまりにも書評の評価が高かっただけに、「皆が褒めるほど特別に凄い本でもないかも?」と感じたのも確か。次はちょっと間を置いて「フェルマーの最終定理」を読むことになると思うけど、藤原正彦フェルマーの最終定理について書いた文章よりも面白く読めるかどうか。期待半分、疑心半分。