「クライマーズ・ハイ」 横山 秀夫

見事。この人は長編も書けるのだ、と思うと嬉しくなる。短編の名手であることは疑いようがないけれど、長編の体裁をとっている「半落ち」にしても、僕的には連作短編だと捉えているし、この人が長編を書くとどうなるんだろう?とは思っていた。それがこの出来。素晴らしい。

この人の本を読むと、いつも仕事に対する誇りというものについて考えさせられる。主人公達のような熱い激務に身を捧げる気はさらさら無いけれど、彼らの持つ誇りには憧れるし、もしかしたら(大きさは小さくても)同じ種類の誇りを持つことだってできるかもしれない。

ただ、主人公達に多い「上のポストを目指す」という野心は僕には縁がなくて、主人公の心情を追っていく気持ちにどこか冷めたものが混じることも少なくなかった。その点、ひたすらに今の仕事に携わる自分を磨き上げていくこの本の主人公には、存分に自分の気持ちを重ねていくことができた。

「熱い男たち」系の作家としては、この人と福井晴敏が一番の楽しみですなぁ。次の作品もぜひよろしくお願いします。<(_ _)>