「女王様と私」 歌野晶午

各方面で評価の高かった「葉桜の季節に君を想うということ」は仕掛けばかりが目立って好きになれなかったが、この本はとても気に入った。「葉桜…」と相似形の仕掛けもあるが、この本では軽く花を添える程度。それよりも44歳引きこもりロリコンオタクの所作や心情がよく描けていたと思う。嫌悪感と親近感の入り交じった適当な距離感で主人公の心情を追っていけたのも楽しめた要因だろうか。さらに、「ロリコンは社会から排除すべし」という僕の深層心理が、主人公に対する著者の視線や、いくつかのどんでん返しの末にたどり着いたラストを歓迎したのかもしれない。

Amazonの書評の中には「半分が無駄文」というものもあったが、無駄だったのは探偵の独白(読み飛ばした)ぐらいで、あとはこの主人公を描写する役割を担った文章であり、決して無駄ではなかったと思う。