「わくらば日記」 朱川湊人

これはまたいい本を書いたものだ。題名の「わくらば」という言葉は、広辞苑によると「病気におかされた葉。また、色づきすがれた葉」。病に冒された主人公のお姉さんのことだ。このお姉さんの「人であれ、物であれ、それらの記憶を読み取ってしまう力」をポイントとして話が展開していく。

収録されている五本の短編のうち、最初の二本まではあまりいい印象を持たなかった。お姉さんの能力の悲劇的な側面ばかりが強調されているように思えたからだ。しかしそれ以降の話は、著者の視点に暖かみが加わり、姉妹の関係についても相互に頼っている様子が読み取れて、僕にとって好ましい世界へと変質していく。特に流星塵の青年とのエピソードに出てくる「『この女の子はあなたのためにちっと頑張りすぎたのです』と言いたかった」という一文には何とも言えない微笑ましさを感じた。

著者は元々ホラー畑の人らしいのだが、こういう本なら僕でも大丈夫。書評を頼りにホラーを避けつつもう少し他の本も読んでみよう。