「萌え経済学」 森永卓郎

二つの点で期待はずれ。

第一におたくに関する考察が「年収300万」本の考察ほど面白くない。体験ルポ的な紹介に止まっていると思う。

第二に議論の展開が期待はずれ。おたくルポの後の「今後の日本経済が激しい競争を避けるためには高付加価値商品を生み出すべき」「高付加価値の具体例が、イタリアに見られるようなアーティスティックな感性の反映」という議論は良かった。そしてそのまま「現在おたく市場で花開きつつある感性」に着目した議論が展開されるのかと期待したら、その話はそのまま尻切れトンボで終わってしまい、あとはインターネット取引の蘊蓄が続くだけ。

「連載記事の集合体を一冊の本にしただけだから」というのが本として一貫性に欠けている原因だと思うので、新たに一冊の本としてちゃんと構成を考えてもらえれば、良い本になり得ると思う。